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2026.09.04
セミナーレポート・コラム 事業承継

SERIES 01 事業承継M&Aの資金調達方法とは? 自己資金・銀行融資・メザニン・JMSを比較

事業承継を、次の成長へ。
SERENDIP SUCCESSION SERIES Vol.1

製造業の事業承継M&Aでは、承継先が買収資金を確実に用意できるかだけでなく、承継後の設備投資や経営改善まで支えられる資金基盤を持つかが重要です。

事業承継先を選ぶ際は、譲渡価格だけでなく、承継後の設備投資や人材投資まで支えられる資金基盤を確認することが重要です。買収資金を用意できることと、承継後の成長を支え続けられることは、必ずしも同じではありません。

セレンディップ・ホールディングスの資金調達は、自己資金や個人信用を活用した初期段階から、案件ごとの銀行融資、メザニンファイナンス、そして投資資金を先に確保するJMSへと段階的に進化してきました。本稿では、セレンディップが公表した済みの資金調達の変遷を通じて、事業承継後の成長を支える資金戦略について解説します。

事業承継M&Aで、なぜ資金調達が重要なのか

M&Aの資金は、株式を取得するためだけのものではありません。売り手のオーナーにとっては、相手が約束どおりに取引を実行できるかを判断する材料であり、承継後の運転資金、設備更新、人材採用、DX、自動化などを進める余力にも直結します。

特に中堅・中小製造業では、雇用、技術、取引関係、地域のサプライチェーンを維持しながら、老朽設備や人材不足といった課題にも向き合う必要があります。買収時点で資金を使い切ってしまえば、再成長に必要な投資ができません。資金調達と承継後の経営支援は、一体で考える必要があります。

セレンディップの資金調達戦略の変遷 自己資金・個人信用から、銀行融資、メザニンファイナンス、JMSによるM&A資金の先行確保へ。

第1段階:自己資金と個人信用を基盤に、経営実行力を積み上げる

セレンディップは2006年、経営コンサルティングを出発点として設立されました。その後、企業再生案件をきっかけに、株式取得を伴う企業経営へ踏み出しました。

この時期に重視したのは、資金の大きさだけではなく、取得後に経営を立て直す実行力です。現場の業務、原価、在庫、損益を可視化し、改善を実行する。ここで得た経験が、後の製造業への事業承継M&Aにつながりました。

第2段階:銀行融資を活用し、案件ごとに事業承継M&Aを実行

事業承継案件が増えるにつれ、資金調達の中心は金融機関からの借入へ移りました。銀行融資は、普通株式を新たに発行せずに資金を確保できるため、既存株主の持分を薄めずに投資規模を広げられる手法です。

2014年に天竜精機をグループに迎えるなど、製造業の事業承継M&Aを進める中で、自己資金だけに頼らず、案件ごとに金融機関からの融資を活用するようになりました。

一方、借入には返済が伴います。買収後の返済負担が設備投資や人材投資を圧迫しないよう、対象企業の収益力、返済計画、承継後の投資余力を一体で考える必要があります。天竜精機でも、短期的な売却を前提とせず、長期的な成長を支える方針と資金計画を組み合わせました。

第3段階:メザニンファイナンスで、大型M&Aと希薄化抑制を両立

メザニンファイナンスとは、銀行融資などのデットと、普通株式によるエクイティの中間に位置する資金です。劣後ローンや優先株式などがあり、案件の規模や収益力に応じて条件を設計します。

セレンディップは、借入に加えてメザニンファイナンスを活用し、エクセルおよびサーテックカリヤのM&Aを実行しました。普通株式の発行だけに依存せず、株主価値の希薄化を抑えながら成長投資を進めるためです。メザニンの活用については、2026年3月期通期決算説明会の要約でも説明しています。

第4段階:案件発生前に資金を確保するJMSへ

2026年6月、株式会社ものづくり事業承継ホールディングス(JMS)を設立しました。JMSは、中堅・中小製造業の事業承継と長期保有投資を継続的に行うための資金調達・投資プラットフォームです。

同年6月22日、セレンディップによる5億円と、商工組合中央金庫および京都キャピタルパートナーズによる合計20億円の出資について株式投資契約を締結し、合計25億円の投資資金を確保しました。

資金をあらかじめ確保することで、案件が具体化した後に一から調達するのではなく、必要なタイミングで投資判断を行える体制を整えています。JMSを通じた投資先についても、短期売却を前提とせず、経営人材、管理体制、製造現場改善、DXなどを組み合わせて成長を支援します。詳しくは、JMSの公式解説で紹介しています。

事業承継先を選ぶ際、資金面で何を確認すべきか

事業承継を検討するオーナーにとって、譲渡価格だけでなく、相手の資金調達方法を確認することは重要です。買収時の資金を確保できても、過度な借入負担によって設備投資や人材投資が止まれば、会社の成長余力が失われる可能性があります。

事業承継を検討する際は、譲渡価格に加えて、次の点を確認することが重要です。

  • 買収資金を確実に用意できるか
  • 承継後の運転資金や設備投資枠があるか
  • どの程度の保有期間を想定しているか
  • 承継後の経営を担う人材と管理体制があるか
  • 従業員や取引先への説明方針が明確か

買収時の資金を確保できても、過度な返済負担によって設備投資や人材投資が止まれば、会社の成長余力は失われます。資金の出どころだけでなく、その後に誰が経営を担い、どのような投資を行うのかまで確認することが大切です。

まとめ

セレンディップの資金調達は、自己資金・個人信用から銀行融資、メザニンファイナンス、JMSへと段階的に進化してきました。これは単に調達額を増やすためではなく、承継後も企業を長期的に支え、ものづくり企業を残すだけでなく成長させるための基盤を広げてきた過程です。

事業承継は、株式を譲渡して終わるものではありません。承継は、次の成長へのスタートラインです。

よくある質問

Q1.JMSは一般的なM&Aファンドですか?

JMSは、事業承継を目的とした製造業への投資と長期保有を行う資金調達・投資プラットフォームです。一般的なファンドとの優劣ではなく、投資の時間軸と、承継後の経営支援まで担う点に特徴があります。

Q2.承継先を選ぶ際、資金面で何を確認すべきですか?

買収代金の確実性だけでなく、承継後の設備投資、人材投資、運転資金を確保できるか、返済負担が過大でないか、長期保有と経営支援の方針が明確かを確認することが重要です。

Q3.事業承継M&Aには、どのような資金調達方法がありますか?

自己資金、銀行融資、メザニンファイナンス、出資などがあります。M&Aの規模や企業の財務状況、承継後の投資計画などによって適した方法は異なります。

Q4.銀行融資とメザニンファイナンスは何が違いますか?

銀行融資は借入による資金調達です。メザニンファイナンスは、一般的な借入と普通株式による出資の中間に位置する資金調達手法で、劣後ローンや優先株式などがあります。

事業承継について考え始めたオーナーの方へ

まだ譲渡を決めていない段階でも、後継者問題や今後の選択肢を整理しておくことには意味があります。セレンディップでは、事業承継の方法だけでなく、承継後の経営体制や資金計画、設備投資、人材、製造現場の改善まで含めて検討しています。

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著者

北村 隆史/セレンディップ・ホールディングス株式会社 取締役CFO

事業会社での経理・経営企画、経営コンサルティングを経てセレンディップに入社。グループ会社CFOとしてM&A後の経営に携わり、現在は取締役CFOとしてグループ経営を推進している。詳しいプロフィールはこちら