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2026.05.22
デジタル サステナビリティ サステナビリティ

【サスティナビリティ事例】三河鉱産様 改善も脱炭素も“できることから” 属人化を越え、データで語る現場へ

「同じレシピなのに、人によって生産性に差が出るのはなぜか。」
三河鉱産では、そんな現場の疑問を出発点に、作業ログやエネルギー使用量の見える化に取り組みました。
見えなかった作業の違いやムダが明らかになることで、現場自らが改善に動き出し、作業の標準化や稼働効率の向上、CO₂排出量の削減へとつながっています。
改善も脱炭素も、まずは「できることから」。製造現場の“見えない課題”に向き合った事例です。

ポイント

課題

同じレシピでも作業者によって生産性に差が出る。

工程の所作や段取りが属人化しており、何が問題か分からないまま改善できない状態だった。

電力のムダやCO₂排出量も把握できず、環境対策も手がつけられなかった。
解決策
  • HiConnexで作業の流れや時間を見える化

  • GreenConnexで電力使用とCO₂排出量を設備ごとに管理

  • データを使って、改善ポイントを現場で把握・対策できる仕組みを構築

効果

  • 作業の標準化が進み、生産が安定

  • 電力ロスの削減とCO₂排出量の管理が可能に

  • 現場が自ら改善できるようになった

塗装剤で“世界を塗り替える”

三河鉱産株式会社(以下、同社)は、鋳造に欠かせない副資材「塗型剤」の開発・製造・販売を手がける専門メーカーです。1948年の創業以来、トヨタグループ各社をはじめ、自動車、建機、インフラ分野など、幅広い業界に製品を供給してきました。
塗型剤は、鋳造品の仕上がりや不良率に大きく影響する重要な資材であり、当社の中核事業です。「鋳物の未来を創造する」というミッションのもと、「塗型剤で現場を変え、塗型剤で環境を守り、塗型剤で三河から世界へ」というビジョンを掲げ、グローバル市場への展開も本格化しています。
また、生産性の向上、属人化の改善、カーボンニュートラルへの対応といった、製造業が抱える共通課題に対しても、現場起点の変革で着実に応えています。

人手不足・調達リスク・環境対応、そして“見えない現場”という壁

同社が直面していたのは、製造業に共通する複合的な経営課題でした。特に大きな課題となっていたのが、現場を支える人手不足と、塗型剤の主原料である黒鉛の安定調達です。黒鉛はEVバッテリーにも使用される戦略物資として需要が急増しており、主要な産出国の輸出規制の影響も重なって、調達リスクが年々高まっている状況でした。限られた人員と資源で、安定した品質と生産体制を維持することは、喫緊の経営課題となっていました。

三河鉱産株式会社代表取締役社長 小川芳考氏

「塗型剤は当社の中核事業であり、社員一人ひとりが強い思い入れを持っています。現場の状態を正しく把握し、作業の安定性を確保する仕組みを整えることが、当社のビジョン実現には欠かせないと感じていました。」

──小川社長

そのための体制整備に取り組む中で、最初の壁となったのが「現場の見えなさ」でした。特に課題が集中していたのは、塗型剤の製造を担うミキサー工程です。製品ごとに配合や手順が異なる中で、作業の多くが熟練者の勘や経験に依存しており、標準書や配合表があっても、実際の作業がどのように行われているかを把握する手段がなかったのです。その結果、工程ごとに作業の進め方や段取りにばらつきが生じていても、その要因を特定できず、改善の糸口がつかめない状態が続いていました。

「何が良くて、何が無駄だったのかが分からない。属人化された状態では、改善のしようがなかったのです」

──佐橋室長

また同社では、環境経営を経営方針の柱の一つとし、CO₂排出量の見える化や削減にも中長期的に取り組む方針を掲げていました。背景には、取引先やOEMからのカーボンニュートラル対応の要請が強まっており、環境配慮は「社会的責任」にとどまらず、事業継続や信頼性にも直結する重要テーマとなっていました。

属人化からエネルギーコストまで。経営と現場の両面に寄り添った提案が、導入判断の決め手に

作業の進め方にばらつきがある現場の課題と、エネルギーコストや環境対応といった経営課題。その両方に対して、セレンディップ・ホールディングスと東邦ガスエナジーエンジニアリングは、現場の実態を丁寧に捉えながら段階的に改善していくアプローチを提案しました。まずは属人化の影響が大きかったミキサー工程に着目し、作業ログを取得・分析。

そこから設備ごとの電力使用を把握し、CO₂排出量の見える化・算定につなげる流れまでを提示。
「いま何が起きているか」を把握するところから始める提案が、経営にも現場にも納得感をもたらしました。

「まずは事実を見えるようにする、という段階的な提案が、現場にも無理がなく、導入を前向きに検討できました」

── 小川社長

属人化という現場課題から、エネルギーや環境といった経営課題まで。両面に応える提案力が、導入の決め手となったのです。

現場はどう変わった?─改善が“習慣”になるまでのプロセス

ここでは、HiConnexとGreenConnexを導入した三河鉱産株式会社、導入支援を行った東邦ガスエナジーエンジニアリング株式会社の小野氏、セレンディップ・ホールディングスの服部氏に、実際の取り組みと現場の変化について伺いました。

現場定着に向けた工夫

HiConnexとGreenConnexの導入によって、“見える化”は単なる数値取得にとどまらず、現場の働き方そのものを見直すきっかけになりました。
ツールを導入した当初は、まだ現場に慣れがなく、操作面への戸惑いや心理的な抵抗感も見られました。とくに「監視されているのではないか」という不安の声や、練り工程と取り出し工程を30分ごとに切り替える運用のなかで操作が煩雑になり、一時的に混乱する場面もありました。

 

「まず取り組んだのは、これは評価のためではなく“改善のためのツール”だということを、朝礼ミーティングで丁寧に伝え続けることでした。 ただ、工程の切り替えごとに操作が変わる場面もあり、“ボタン操作が多くて大変だ”という声が現場から上がってきて困ることもありました。」

──佐橋室長

製造部品質生技室 佐橋孝治氏

 

こうした現場の声を受けて、セレンディップでは実際の運用に合わせた操作方法の見直しを進めることにしました。
もともと画面設計はシンプルでしたが、作業の粒度や記録タイミングを現場に合わせて最適化することで、無理なく記録できる形へと改善しました。 具体的には、「一時停止ボタンを押すだけで必要なログが残る」という、誰でも迷わず使える直感的な運用に変更しました。

 

「現場の皆さんと一緒に、負担なく続けられる記録方法を考え、必要な情報だけを確実に残す仕組みに整えました」
──セレンディップ 服部氏

 

この工夫により、記録作業の負担は大きく軽減。 必要なデータが着実に蓄積されるようになり、現場への定着も一気に進みました。

 

毎日のログ確認が習慣に──改善の文化が根づく

HiConnexの導入をきっかけに、現場では「自分たちで使いこなす」文化が着実に根づき始めました。
データを通じて、一生懸命やってきた仕事が客観的に見えるようになったことで、改善への気づきも深まり、行動が変わっていったのです。

「与えられた改善計画に従う」のではなく、自分たちで業務を整理し、分析し、見直す── そんな前向きな姿勢が、朝礼ミーティングや日々のちょっとした会話の中から自然に生まれるようになりました。

現場にはもともと時系列で捉える生産データの蓄積がなく、属人的な運用が中心でした。しかし一方で、Excelを使って自分たちの仕事を整理・分析する文化は根づいていました。そのため、HiConnexやGreenConnexから出力されるデータも、自ら加工・編集しながら、必要な情報を見える形に整える取り組みが自然と広がっていったのです。

 

「ツールで得たデータの構造を理解し、自分たちでExcelに落とし込んで使い始めていたのを見て、 “ただ導入しただけ”ではなく、現場に本当に根づいてきていると実感しました」──セレンディップ 服部氏

HiConnexを活用することで設備単位で「いつ・どれだけ電力を使っているか」まで瞬時に把握し対策を講じることが可能に

 

 

改善の動きが、他部門へも波及

こうした改善の取り組みは、製造現場の枠を超えて研究所との連携にも広がっています。 たとえば、取り出し時間が長い製品については、開発部門とともにレシピの見直しを検討するなど、開発と製造の距離も縮まりつつあります。

 

「改善の動きが、部門の垣根を越えてつながり始めています」──小川社長

 

 

そして“脱炭素経営”への広がりへ

HiConnexを通じて得られた改善の手ごたえは、やがてエネルギー管理と環境対応の分野へと広がっていきます。

 

「作業データを見える化したことで、“どの工程にどれだけ時間がかかっているのか”が分かるようになりました。すると次に、“どの工程が、どれだけ電力を使っているのか”という疑問が自然と出てきたんです。そこからGreenConnexの導入を進める流れになりました」──佐橋室長

 

ミキサーじゃなかった?見えてきた  “本当の改善ポイント”

従来は工場全体の電力使用量こそ把握できていたものの、設備単位で「いつ・どれだけ電力を使っているか」までは正確に見えず、電気容量から推定するなど工夫はしていたものの、明確に課題を認識することが出来ませんでした。そのため、改善の根拠が曖昧で、「試行錯誤を繰り返していた」といいます。

 

「当初は、ミキサー工程が変数としてのインパクトが一番大きいと思い、そこに改善の焦点を当てていました。けれど、GreenConnexで計測してみたところ、実際には多くの電力を使用している粉砕設備やコンプレッサーの方がはるかに改善に向けたネタが多く眠っていることに気づきました。こうした“思い込み”には、導入しなければ気づけなかったと思います」──佐橋室長

 

定量的なデータに基づく可視化によって、無駄のある設備や時間帯が明確になり、改善施策の方向性が具体的に定まりました。
東邦ガスエナジーエンジニアリングによる “実装力”──CFPを実現する仕組みづくり

三河鉱産では、エネルギー管理をさらに一歩進め、製品ごとのCO₂排出量(CFP)を可視化するために、 東邦ガスエナジーエンジニアリングの支援のもと、CFP算定に対応した電力データ設計に取り組みました。

 

「すべての設備にセンサーを取り付けるとコストがかさむため、“どこまでを実測し、どこを按分でカバーするか”を、現場の方々と丁寧に検討しました。 ミキサーや粉砕機といった主要設備にはセンサーを設置し、それ以外の共通設備については、レシピや生産量に応じて按分する“メリハリ設計”を採用しています」──東邦ガスエナジーエンジニアリング 小野氏

 

この設計により、GreenConnexで取得した設備単位の電力使用量が正確に可視化され、 どこを優先して省エネ対策すべきかが、数字で判断できるようになりました。

もともと同社では、CO₂排出量の把握(CFP算定)に向けた独自の取り組みを行っていましたが、 そこにセレンディップの業務理解と、東邦ガスのエネルギー領域の知見が加わったことで、 より実測ベースに基づいた、高精度なCFP算定プロセスへと進化を遂げました。
各工程ごとの使用電力量をルール化し、日々の稼働データを入力するだけで自動的にCO₂排出量が集計される仕組みを整備。 また、複雑なBIツールではなく、現場が慣れ親しんだExcelベースで完結できる構成としたことで、 導入コストを抑えながら、現場主導で運用・継続できる、実用的な仕組みが実現しました。

最後に・・・未来への展望

「以前は、“たぶんこれが原因だろう”といった感覚ベースで会話していましたが、 今では “どこで、どれだけ遅れたか”“なぜ負荷が増えたのか” をデータを見ながら具体的に議論できるようになりました。 現場同士での学び合いも進み、改善提案も自然と活発になっています。」──佐橋室長

改善が“文化”として根づき始めた今、同社は次のステップとして、蓄積されたデータを環境経営に活かすフェーズへと進もうとしています。

「今後は、これまでのデータをもとに、どのアクションがCO₂削減や省エネにつながるのかを見極めていきたい。 製品単位でのCO₂排出量もさらに精緻に見える化し、経営判断や製品開発に活かす材料にしていきます。 環境対応を“義務”ではなく“競争力”に変えていく──。 持続可能な経営に向けて、これからも一歩ずつ着実に取り組んでいきます」──小川社長

最初の一歩が、未来を変える。

属人化・品質ばらつき・エネルギーのムダ──

それらに悩む現場でも、小さな改善から未来は動き始めます。

次に踏み出すために ― あなたの工場でも始めてみませんか?