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2021.02.01 実施事例

ものづくり事業承継の実例「①事業承継のきっかけ」~50歳を過ぎ、自ら第三者承継に向け一歩踏み出す~

シニアフェローによる事業承継相談
連載コラム 第一回 事業承継のきっかけ

ものづくり事業承継研究所長の清水です。

ものづくり事業承継研究所所長 清水

ものづくり事業承継研究所所長 清水

今回から、「ものづくり事業承継の実例」として、2018年10月に、セレンディップグループに参画しました三井屋工業株式会社(以下、三井屋)をひとつの事例として、①事業承継のきっかけ、②事業承継の準備、③事業承継の実行、④事業承継後、⑤事業承継まとめの5回に分け、1年かけて順次ブログに掲載していく予定です。

特に、このシリーズでは、ものづくり事業承継研究所のシニアフェローでもある元オーナー「野口明生様」からの視点に着目して記載していきますので、これから事業承継の検討を進めるオーナー経営者の方々のご参考になれば幸いです。

第1回目は、「事業承継のきっかけ」
50歳を過ぎ、自ら第三者事業承継に向けて一歩踏み出した野口様の考えやそこにいたるまでの経緯について、お伝えしていきたいと思います。

事業承継の舞台
~三井屋工業株式会社の沿革・概要~

1947に創業した会社です。戦後の財閥解体によって三井物産名古屋支店が分割され、そのうちの一つが三井に名古屋の屋をとり、三井屋商店と命名されたのが社名の由来です。現在、自動車内外装品製造の事業を行い、トヨタ自動車様はじめ自動車関連企業と取引を行っています。

三井屋工業外観

三井屋工業 外観

◆売上高:85億4000万円(2019年度)
◆従業員:277名(2020年3月末時点)
◆事業内容:自動車内外装品製造
◆主要取引先:トヨタ自動車株式会社、トヨタ紡織株式会社、トヨタ自動車東日本株式会社、トヨタ車体株式会社、林テレンプ株式会社 他

事業承継の背景
~学生時代に父親が亡くなり、会社を継ぐことに~

今回のブログの主人公は、5代目社長であった野口明生様です。(写真:右側)

左:プロ経営者梅下 右:5代目社長野口様

左:プロ経営者梅下 右:5代目社長野口様

三井屋の創業者が野口様の叔父様で、2代目が野口様のお父様でしたが、野口様が19歳の時、48歳の若さで他界されました。あまりに早すぎるお父様との別れは、将来を見据える最初のきっかけになったと言います。

「父の想いを引き継ぎたい。父が三井屋で何を思い、何を考えていたのかを仕事を通じて知りたい」と強く思ったそうです。その後、野口様は、東京の大学を卒業後、すぐに会社を継がずに、東京の商社にて経験を積み、26歳で三井屋に入社しました。その後、31歳で取締役、1998年に44歳で5代目社長となりました。

第三者承継へ
~父の想いも引き継ぎ、50歳で親族以外への事業承継を考え始める~

野口様が事業承継に関して考え始めたのは、50歳を超えた頃からでした。

野口様には娘が二人いらっしゃいますが、どちらにも、強いて会社を継いでほしいと言ったことはありませんでした。奥様も、こどもたちには望む道を歩ませるのが一番だと、娘に継がせないことに賛成してくれたとのことです。

また、生前お父様が、「家業として、すなわち野口家のものとして守りたいということではなく、事業を引き継ぐ者として、三井屋を守り、成長させることを常に考えていた」ことも、会社の成長を第一に考えた第三者への事業承継に踏み出す大きな後押しになったということです。

事業承継に向けて覚悟を決める
~覚悟を決め、自分が先頭に立った事業承継へ~

第三者への事業承継を考え始めた当初は、自らが矢面に立って動くより、当時の副社長に任せた方が良いかもしれないと迷った時期もあったとのことでしたが、あるとき、このような事案は、トップ自ら、いや創業一族として、自分が先頭に立ってやらなければいけない、と強く感じるようになったそうです。

「他人任せではきっと悔いが残る。それこそ、ご先祖様に、叔父や父に顔向けができないではないか」と、自分一人の案件として進めることに決められました。

事業承継に向けた調査開始
~動き出したものの、すぐには自分と考えのあった事業承継先が見つからず~

その後、不思議なことに、そのように気持ちが定まって間もなく、何社か投資ファンドからのコンタクトや、金融機関から公的資金の入ったファンドのご紹介を頂くようになったとのことです。しかし、三井屋の価値を単に高めること以上に、今後、三井屋をどういう会社に成長させていくのかを考えてくれる事業承継先に任せたかった野口様にとっては、どこも、なんとなくしっくりこない、というのが正直な感想でした。

事業承継のきっかけのまとめ

弊社がお話を伺う事業承継の案件は、体力の衰えを感じ始めた頃になってからというケースも少なくありません。その点、野口様が事業承継を検討し始めたのが、50歳過ぎた頃からということで、時間的な余裕をもって、かつ、自ら事業承継に向けて動き出されたという点は特筆すべき点ではないかと思います。

また、「三井屋をどういう会社に成長させていくのかを考えてくれる事業承継先に任せたかった」という言葉にありますが、事業承継の目的を明確にもって行動されたという点も円滑な事業承継につながったのではないでしょうか。

 

次回、本シリーズの連載は、「ものづくり事業承継の実例:②事業承継の準備」をテーマに記載させて頂く予定となっておりますので、引き続き、よろしくお願いします。

 

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